転居届に関する情報と弁護士会照会(その2)

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1、弁護士会照会とは
 弁護士会照会とは、弁護士法23条の2に定められた制度で、弁護士が、弁護士会に対して公務所(官公庁)又は公私の団体に対して必要事項を調査・照会することを申し出て、弁護士会がその申し出を正当なものと認めた場合に公務所又は公私の団体に対し必要な事項の報告を求める制度です(以下、「23条照会」と言います)。
 弁護士が職務を行ううえで、事実を立証するための資料を収集することは不可欠ですが、必ずしも依頼者が資料を持っているとは限らないため、担当する事件に関する証拠や資料を円滑に集めて事実を調査することを目的としています。
 そして、照会を受けた公務所又は公私の団体は、弁護士会に対し、原則として、報告・回答義務があるものとされています。


2、転居届に関する23条照会の運用変更
 今般、「郵便事業分野における個人情報保護に関するガイドライン」の改定がなされました。
 これを踏まえ、日本郵便は、令和5年(2023年)6月から転居届に関する23条照会について従来の運用を変更し、転居届記載の新住所について回答することとなりましたので、本記事では、具体的な手続について解説します。


(1)要件
 「郵便事業分野における個人情報保護に関するガイドライン」の解説102頁に、以下の通り記載されています。
 「弁護士会が、弁護士法第23条の2の規定に基づき、訴え提起等の法的手続を採ろうとする者(弁護士会が照会申出を審査してDV・ストーカー・児童虐待の事案との関連が窺われない法的手続であり適当と判断した旨を表示して発出した照会に係る者に限る。)が申立ての相手方の住所の特定を図ろうとするため又は判決等の強制執行をするに際して相手方の住所を特定するため、住民票を異動せず転出し所在の把握が困難となっている当該相手方の転居届に係る情報を照会してきた場合であって、事業者が、当該相手方となる者の同意を得ることなく、転居届に係る情報を、当該弁護士会に提供する場合。」
 したがって、以下の要件①、②に該当する場合には回答することが認められることになりました。
要件①
:訴え提起等の法的手続を採ろうとする者が申立ての相手方の住所の特定を図ろうとするための照会であること又は判決等の強制執行をするに際して相手方の住所の特定を図ろうとするための照会であることのいずれかに該当すること

要件②:DV・ストーカー・児童虐待の事案との関連が窺われない法的手続であること


(2)具体的手続(※令和5年12月現在)
 上記要件を踏まえ、愛知県弁護士会では、以下の手続を行っています。
(Ⅰ)申出会員弁護士の申出内容を審査して、訴え提起等の法的手続を採ろうとする者が申立ての相手方の住所の特定を図ろうとするための照会であること又は判決等の強制執行をするに際して相手方の住所の特定を図ろうとするための照会であることのいずれかに該当する照会であることを確認し、いずれの場合であるかを照会先機関に明らかにします(要件①に対応)。
(Ⅱ)依頼した事件がDV・ストーカー・児童虐待にかかる事案ではないこと、また、弁護士会照会によって得られた住所情報を決してDV・ストーカー・児童虐待には利用しないことを約する書面に、依頼主本人において、署名・押印したものを23条照会の申出書に添付させます(要件②に対応)。


 今後は、23条照会によって、今まで以上に相手方の転居届に係る情報の取得を活用できることが期待できます。


※具体的手続の詳細については、今後運用が変更される可能性がありますので、23条照会の申出を行う各弁護士会ごとの手続をご確認ください。