令和6年(2024年)5月24日、道路交通法が一部改正され、以下の規定が設けられました。
1 自転車運転の「ながらスマホ」に対する罰則強化(令和6年11月1日から施行)
道路交通法改正の目的は、近年多発する自転車による交通事故を防止することにあります。特にスマートフォンが普及した昨今、スマホを見ながら自転車を運転する者が多く、交通事故が多発しています。
(1)禁止事項は以下のとおりです。
①自転車運転中にスマホで通話すること(但し、ハンズフリー装置を併用する場合を除く)
②自転車運転中にスマホに表示された画面を注視すること
なお、①と②のいずれも、自転車が停止している場合を除きます。
(2)罰則
①自転車運転中に上記(1)の「ながらスマホ」をした者は、6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金
②自転車運転中に「ながらスマホ」により交通事故を起こすなどした場合、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
2 自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設(令和6年11月1日から施行)
(1)自転車の酒気帯び運転をした者は罰則の対象となりました。
また、自転車の酒気帯び運転をするおそれがある者に酒類を提供した者も酒気帯び運転のほう助として処罰の対象となります。
なお、いわゆる「酒酔い運転」は、もともと自転車においても禁止されています。
(2)罰則
・酒気帯び運転をした者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・ほう助罪は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
3 自転車に対する、いわゆる「青切符制度」の導入
(1)導入の背景事情
警察庁によると、2022年には、自転車が関係する交通事故は、全国でおよそ7万件と増加傾向が続いているほか、死亡や重傷事故になった7107件のうち、73.2%にあたる5201件で自転車側に前方不注意や信号無視、一時不停止といった交通違反が確認されたということです。
こうした状況を受けて、政府は、自転車の悪質な交通違反に対し、車やオートバイと同じように反則金を課す、いわゆる「青切符」による取り締まりを導入しました。
(2)取り締まりの対象年齢及び対象行為
「青切符」による自転車の取締りは16歳以上に適用され、112の違反行為が対象となります。
具体的には、
・信号無視
・一時不停止
・右側通行などの通行区分違反
・自転車の通行が禁止されている場所を通ること
・遮断機が下りている踏切に立ち入ること
・例外的に歩道を通行できる場合でも徐行などをしないこと
・ブレーキが利かない自転車に乗ること
・携帯電話を使用しながら運転すること
・傘を差したりイヤホンを付けたりしながら運転するなど
といった重大な事故につながるおそれのある違反を重点的に取り締まることになります。
「青切符」による取締りは、公布から2年以内に施行される予定で、今後、反則金の金額などについて政令が定められます。
※青切符とは
交通反則通告制度 比較的軽微な交通違反の違反者に対する行政手続。交通反則告知書(反則切符=青切符)を受け、反則金を納めれば刑事処分を科されない。納めない場合、警察が検察に事件送致して刑事手続に移行することがある。反則金の納付額は2022年度で約452億円。反則金は国の歳入になった後、都道府県や市町村に交通安全対策特別交付金として交付され、信号機や道路標識、歩道橋などの安全施設の整備費用に充てられる。無免許や飲酒運転、重い速度違反などは反則制度の対象外で、交通切符(赤切符)を受けて検察に送付され、刑事手続が進む。