Q1、捜査機関に身体を拘束されていた人が保釈された、というニュースをよく目にしますが、「保釈」とは何でしょうか。
A1、
保釈とは、刑事手続において、起訴後に身柄拘束(勾留)を受けている被告人が解放される手続を意味します。
Q2、知人が逮捕されたと聞いたのですが、すぐに保釈手続をとることができるのでしょうか。
A2、
保釈手続はあくまで「起訴後」の手続であるため、逮捕されてすぐに行うことはできません。
逮捕後は、通常であれば、被疑者を起訴するか否かを決定するための(起訴前の)身柄拘束手続(勾留)に移行します。この段階で身柄拘束からの解放を求める場合には、勾留への準抗告(異議申立て)などを行うことになります。
Q3、保釈にはどのような種類があるのでしょうか。
A3、
保釈には、①権利保釈(刑事訴訟法89条)、②裁量保釈(同法90条)、③義務的保釈(同法91条)の3種類が存在します。
権利保釈とは、一定の事由がある場合を除いて、被告人に「権利」として保釈が認められるというものであり、裁量保釈とは、権利保釈の要件を満たさない場合であっても裁判所の判断によって保釈が許可されるというものです。
義務的保釈は、不当に勾留が長引いたときに、請求又は裁判所の自主的な判断によって保釈が認められるというものです。
Q4、権利保釈はどのような場合に認められるのでしょうか。
A4、
権利保釈は以下の除外事由のいずれかに該当しない限りは、認めなければならないとされています。
①被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
上記の除外事由のうち、④の事由は、被告人が被疑事実について争っているとき等に認められてしまう場合が多く、権利保釈の最大の障害となっています。
なお、権利保釈の場合にも下記A5のとおり、保釈保証金が必要となります。
Q5、保釈が認められるにはお金が必要ですか。また、その金額はどれぐらいでしょうか。
A5、
保釈の種類を問わず、被告人の出頭を保証するため、保釈保証金(同法93条)を裁判所に納める必要があります。
保釈保証金の金額は、抽象的にいうと「犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮し」て、「被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額」を裁判所が決定します(同条2項)。
極端なケースですが、カルロス・ゴーン氏の日産会長特別背任事件に関し2件の特別背任で合計15億円の保釈保証金が決定されたことや、堀江貴文氏のライブドア粉飾決算事件に関し3億円の保釈保証金が決定されたことが世間の耳目を集めました。
一般的な刑事事件では、上記のような極端に高額な保釈保証金が決定されることはなく、保釈保証金の相場は、最低150万円、通常200万円などといわれており、これに事案ごとの個別事情を加味して具体的な金額が決定されることとなります。
Q6、知人が起訴されたので保釈手続を行いたいのですが、保釈保証金を支払うだけの資力がない場合はどうしようもないのでしょうか。
A6、
保釈保証金を立て替えてくれる日本保釈支援協会の利用や、全国弁護士協同組合連合会が保釈保証金を連帯保証し、保釈保証金について保釈保証書を発行してもらう保釈保証書発行事業制度の利用が考えられます。それぞれ保証審査や預託金、保証料の負担等いくつかのハードルがあるものの、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか(詳細は下記リンクをご参照ください)。
日本保釈支援協会:https://www.hosyaku.gr.jp/system/flow/
保釈保証書発行事業制度:http://www.zenbenkyo.or.jp/service/hosyakuhosyou.html
Q7、知人が起訴されたので、保釈保証金を納め、保釈申請を行いたいと思います。この後、納めた保釈保証金はどうなるのでしょうか。
A7、
何事もなければ原則的に納めた保釈保証金は返ってきます。
もっとも、下記の場合には、保釈が取り消され、保釈保証金の全部又は一部が没収されることがあります(同法96条)。
①被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
②被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
④被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をした場合。
⑤被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
上記の場合に当たらなければ、保釈の後に被告人が実刑の有罪判決を受けた場合であっても、保釈保証金は没収されません。