Q1.A社は同族経営で、社長である私、専務(弟)、経理担当役員(社長の長男)のほか、社外の妹や妹の子(甥)が株を保有しています。
私は今期限りで引退し長男を社長にしたいのですが、専務の弟が長男ではまだ若すぎると言っているので、専務を説得して、決算後にいつもの通り税理士さんに総会の議事録を準備していただき役員のハンコをもらおうと思っています。
A1.
株主総会は書類さえ作ればいいというものではありません。
会社法上、毎事業年度に1回は定時株主総会を開催しなければならないとされています。総会を招集し開催しないと、会社法違反となってしまい、100万円以下の過料の制裁があります。
特に、昨今コンプライアンスが厳しく要求される時代です。
もし会社の経営支配をめぐる争いなどが生じた場合には、少数派株主から株主総会不存在の訴え、決議無効の訴えなどが出される可能性があります。株主総会が適切に開催されていない場合、取締役選任決議も無効となって、取締役が得ていた報酬については会社に返還するよう求められることになります。また、取締役に選任されていないのに取締役として登記したとして、公正証書原本等不実記載罪に該当することもあり得ますのでご注意が必要です。
Q2.株主総会を開催するにはどうすればよいのですか。
A2.
定款に定めがあればその方法に従うのですが、 定めがなければ招集通知を総会日の1週間前までに各株主に発する必要があります。ただし、株主全員の同意があれば招集通知は省略することができます(会社法300条)。
Q3.甥は海外に住んでおり総会に来ることは難しいのですが、どうしたらよいですか。
A3.
その場合は、本来の招集手続を踏んだうえで、委任状を提出してもらい、委任状による議決権行使をしてもらうことが考えられます。
Q4.株主総会の開催そのものを省略してしまう手段はないのですか。
A4.
取締役が株主総会の決議事項について提案し、その提案に対し、株主全員が書面(または電磁的記録)により同意の意思を表示したときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(「書面決議」会社法319条)。事業報告等の報告事項についても同様に省略できるのです(「書面報告」会社法320条)。
この制度は、株主が少数の会社においてはよく利用されています。株主総会の書面決議の制度を利用すれば、株主総会を開催する手間を省くことができるので、会社の運営に当たって非常に便利です。書面または電磁的記録による意思表示が可能ですので、口頭での同意はNGですが、電子メールではOKということになります。