ペットにまつわる法的トラブルについて

カテゴリー
ジャンル
(散歩中に飼い犬が人に危害を与えたときの法律問題)


Q 散歩中に飼い犬が通行人に飛び掛かり怪我をさせました。この場合、飼い犬と一緒に散       歩していた飼主に法律上の責任は生じますか。


A ここでは、民事上の責任と刑事上の責任についてお話しします。

1 民事上の責任

    この場合、飼主に民法718条の損害賠償責任が問われる可能性があります。民法718条1項は「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」と定め、動物が他人に損害を与えた際にその動物と一緒にいた飼主(占有者)に損害賠償責任を認めています。飼い犬をリードや鎖でつないでいても、散歩中に通行人に飛び掛かり怪我を負わせれば、飼主にこの損害賠償責任が成立すると考えられます。

    他方、民法718条1項によれば、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理をすれば損害賠償責任は問われません。これは、その動物の種類や性質と周囲の状況によって具体的に判断されるのですが、散歩中の犬の場合、小型犬であってもけい留を怠っていればこの責任が認められる可能性が高いと考えられます。実際、体長約40cm、体高約20cmのダックスフンド系雄犬が鎖を外されて走り出したところ、自転車の運転手が犬から逃げようとして誤って川に落ちたという事案で、飼主に民法718条の損害賠償責任が認められました(最高裁昭和56年4月1日判決)。


2 刑事上の責任

    また、散歩中に飼い犬が通行人に怪我を負わせた場合には、一緒にいた飼主に刑事責任(過失致死傷罪、重過失致死傷罪)が問われることもあります。海岸で綱から放たれた土佐犬が人を襲って溺死させた事件で、飼主に重過失致死罪が認められております(札幌地裁苫小牧支部平成26年7月31日判決)。