賃貸物件の入居者の孤独死と荷物の処分について

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Q1.昨今、高齢化が進み、孤独死が話題とされることが増えつつあるように思います。
 孤独死された方が生前有していた財産はどうなるのでしょうか。
A1.
 孤独死された方に相続人がいる場合には、一旦は法定相続人に法定相続分に応じて、相続財産が帰属することとなり、その後、遺産分割協議により、最終的な帰属が決まることとなります。
 一方で、相続人がいない場合には、最終的には国庫に帰属することとなります(民法959条)。

   
Q2.相続人がいない場合に、「最終的に」国庫に帰属するということですが、「最終的に」とはどういう意味ですか。
A2.
 相続人がいない場合でも、直ちに、故人の遺産が国庫に帰属するわけではありません。「相続人のあることが明らかでないとき」(民法951条)は、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任します。
 この「相続財産管理人」とは、読んで字のごとく、相続財産を管理する人ですが、相続財産管理人が相続人の捜索や債権者への弁済、特別縁故者に対する相続財産の分与等の清算業務を行った上で、最終的に残った財産が国庫に帰属することとなります。

 
Q3.私が賃貸しているアパートで、実際に孤独死された方がいらっしゃるのですが、高価なものはなさそうですので、居室内の荷物を私の方で処分してもよいでしょうか。
A3.
 故人の荷物も価値の高低に関わらず、故人の相続財産となりますし、入居者が亡くなられても当然に賃貸借契約が終了するとは限りませんので、勝手に荷物を処分してしまうことは違法な行為となってしまいます。


Q4.それではどうすればよいですか。
A4.
 まずは、相続人の有無を調査する必要があります。警察や行政機関が相続人の調査を行うことがありますが、相続人の身元を教えてもらえるとは限りませんので、弁護士等に依頼して、調査をしなくてはならない可能性があります。相続人がいる場合には、相続人と話をすることになります。
 また、相続人がいても、故人が多数の債務を抱えている場合には、相続放棄をすることがありますし、相続放棄をする前に故人の荷物を処分してしまうと、相続放棄が認められないこともありますので、相続人が対応してくれないこともあります。

 
Q5.相続人がいない場合や、相続人がいても相続放棄している場合はどうしたらよいのですか。
A5.
 相続人がいない場合や相続人がいても相続放棄している場合には、「相続人のあることが明らかでないとき」となりますので、あなた自身が債権者として、家庭裁判所に対して、相続財産管理人選任の申立てを行うこともできますし、相続放棄をした相続人や相続人ではない親族等に相続財産管理人選任の申立をしてもらうのも一つかもしれません。
 但し、相続財産管理人選任の申立てを行う際には、裁判所に予納金等のお金を納めなくてはならないので、申立に費用が掛かります。さらに相続財産管理人が選任されても明渡しまでには、時間も掛かってしまいます。
 相続財産管理人選任の申立以外にも、通常の訴訟手続や強制執行手続の中で「特別代理人」という制度を利用することも可能な場合がありますが、詳細は弁護士に相談をしていただくのがよいと思います。