成年年齢が18歳に引き下げとなります

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Q1.民法の改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるそうですが、どうしてでしょうか。


A1.
 民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることは、18歳、19歳の者を「大人」として扱い、社会への参加時期を早めることを意味します。

これらの者は、既に選挙権が与えられ、国政に関する判断力があるとされていますが、市民生活の基本法である民法においても、自ら就労して得た金銭を自らの判断で取引ができる独立主体と位置づけ、経済取引の面でも一人前の「大人」として扱うことが個人及び社会に大きな活力をもたらすと考えられたのです。なお現在、OECD(経済共同開発機構)加盟国においては35か国中31か国が成年年齢と選挙権をともに18歳と定めています。


Q2.成年年齢が18歳に引き下げられることによって、日常生活にどのような影響がありますか。
A2.
 18歳・19歳の者のなした契約について、未成年者取消権(年齢のみを理由とする契約の取消権)はなくなります。例えば、18歳の者がいわゆるキャッチセールスで、親権者の同意を得ずにエステと化粧品の購入を内容とする化粧品購入契約を代金23万円で締結し、クレジット会社に月々1万5000円を返済する契約を締結したとすると、従来は未成年者取消権の対象とされてきましたが、この取消権は使えなくなります。したがって、若年者に対する自立支援策が講じられる必要が指摘されました。


Q3.若年者の自立支援策とはどのような内容ですか。
A3.
 社会経験が不足している若年者に対する「つけ込み型不当勧誘」として、上記のようなキャッチセールスによる商品販売契約に限らず、就職や容姿等に関する不安を煽って商品を購入させる商法や、恋愛感情に乗じて商品を購入させる商法(いわゆる「デート商法」)等による消費者被害の拡大が懸念されます。

消費者契約法では、平成30年の法改正により、上記のような消費者の社会生活上の経験不足につけ込む行為(不安をあおる告知、恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用)による契約が新たに取消事由とされました(同法4条3項3号・4号)。

また、若年者の自立支援のため学校における消費者被害予防等を含む法教育の充実が期待されます。


Q4.成年年齢の引下げはいつから施行されますか。
A4.
 改正法は平成30年6月に成立しましたが、国民の社会生活に与える影響が大きく周知徹底に相当の期間を設けるのが妥当とされたこと、また、若年者の自立支援策が必要なことから、施行は令和4年4月1日からとされました。


Q5.では、婚姻適齢年齢はどのようになったのでしょうか。
A5.
 従来、婚姻開始年齢は、男性が18歳、女性が16歳と定められていました。このうち女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げ、男女とも18歳で統一することになりました。これは、社会的・経済的成熟度には男女間に特段の違いがないこと、男女平等という基本的価値からすると差異を設けることは妥当でないと考えられたことによります。

今回の成年年齢引き下げと相まって、未成年者の婚姻に父母の同意を要するという事態はなくなりました。


Q6.飲酒・喫煙・公営ギャンブルも18歳から許されるのでしょうか。
A6.

飲酒・喫煙は、民法の成年年齢が引き下げられても、健康面への影響や非行防止の観点から20歳以上という規制を維持することとされました。

また、公営ギャンブルについても、若年者のギャンブル依存症リスクへの対応から20歳要件が維持されています。


Q7.少年法に与える影響はどうでしょうか。
A7.

少年法の適用年齢は、少年の可塑性(※①)を信頼して刑事罰以外の方法で立ち直らせることができる場合には保護処分を課すという刑事政策的配慮に基づいているので、民法の行為能力とは直接の関係はありません。もっとも、民法で18歳以上の者には成熟への期待を語りながら、刑事責任は子ども扱いをするのはおかしいとの議論もあり得ます。

そして、令和3年5月に少年法が改正され、令和4年4月1日から施行されることになりました。その内容は、18歳・19歳の者も「特定少年」として引き続き少年法が適用され、全件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。ただし、逆送(※②)対象事件の拡大や、逆送決定後は20歳以上の者と原則同様に取り扱われるなど、17歳以下の少年とは異なる特例を定めました。

また、少年の時に犯した事件については、犯人の実名・写真等の報道が禁止されていますが、18歳以上の特定少年のときに犯した事件について起訴された場合には、禁止が解除されます。

※①可塑性:現在持っている性格や行動特性が、訓練やしつけによって変化しうること
※②逆送:家庭裁判所が保護処分ではなく、懲役・罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に、事件を検察官に送るものです。逆送された事件は、検察官により刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。