「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、平成28年10月13日から施行されました。
Q1、改正法のポイントはなんですか。
A1、
第1に、成年後見人が家庭裁判所の審判を得て被後見人あての郵便物の転送を受けられるようになりました。
第2に、成年後見人が被後見人死亡後も行うことができる事務(死後事務)の内容およびその手続きが明確にされました。
Q2、なぜ、郵便転送に関する規定が設けられたのですか。
A2、
成年被後見人の郵便物の中には株式の配当通知、クレジットカードの利用明細など、成年後見人が財産管理を行う上で重要な書類が含まれることが想定されます。ところが、後見人が同居の親族でない場合(例えば兄弟とか弁護士など)、被後見人の郵便物の存在や内容を十分に把握できないことにより、後見人の適切な財産管理に支障をきたす場合があります。そこで、このような問題を解消するため、郵便転送の制度が新設されたのです。ただし、被後見人の通信の秘密にも配慮して、転送期間は、成年後見人が被後見人の財産関係を把握するために必要と認められる期間に限定し、原則6か月を超えることができないとされています。
Q3、転送された郵便物はどのように取り扱われるのですか。
A3、
成年後見人は、被後見人に宛てた郵便物を見ることができます。もっとも、成年後見事務に関係がないものについては、成年後見人は速やかに被後見人に交付しなければなりません。
Q4、なぜ死後事務に関する規定が設けられたのですか。
A4、
被後見人が死亡した場合、成年後見は終了し、成年後見人は原則として法定代理の権限を喪失します。しかし、例えば家賃、電話代、水道光熱費など弁済期の到来した債務の弁済、火葬・埋葬に関する契約の締結など一定の範囲の事務は、被後見人が死亡した後も成年後見人において行うことが周囲から期待され、社会通念上これを拒むことが困難な場合があります。そこで、改正法はその要件を明確にしました。
Q5、改正法により成年後見人が行えるとされた死後事務はなんですか。
A5、
①個々の相続財産の保存行為
時効中断の請求行為、相続財産である建物の雨漏り修理など
②弁済期が到来した債務の弁済行為
被後見人の医療費、公共料金の支払いなど
③火葬・埋葬に関する契約締結その他財産保全に必要な行為などです
Q6、成年後見人が上記事務を行うための要件は何ですか。
A6、
①成年後見人が当該事務を行う必要があること
②被後見人の相続人が財産管理を行う状態になっていないこと
③相続人の意思に反することが明らかでないこと
④上記要件に加えて家庭裁判所の許可も必要となります。