婚姻費用の分担について

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Q1.婚姻費用とは何ですか、またその分担とはどういう意味ですか。

A1.
 夫婦が結婚生活を維持するための費用のことを「婚姻費用」といいます。
 夫婦には相互に扶養義務があるため、収入に応じて婚姻費用の分担義務を負っているといえます。そこで、収入が少ない方(権利者)が収入の多い方(義務者)に婚姻費用の支払(分担)を求めることができるのです。特に夫婦が別居している場合、家計が別々になることから、婚姻費用の分担が問題となります。

 

Q2.婚姻費用はどのように算定されるのですか。

A2.
 婚姻費用は、生活に直結するものですから、それが必要なときに支払いがされなないと意味がありません。そこで、実務では、婚姻費用に関する紛争を迅速に解決するため、義務者と権利者の双方の収入金額を基礎とする算定方式に基づく算定表により算定されることが一般的です。

 たとえば、給与所得者である夫の年収が700万円、同じく給与所得者である妻の年収が200万円で、夫婦の間に子供が1人(妻と同居)いるケースだとすると、算定表に基づけば、妻は夫に対し、1カ月10~12万円の婚姻費用の支払いが請求できることになります(算定表は裁判所のホームページ等で公開されています)。

 もっとも近時、日本弁護士連合会から、裁判所の簡易算定表は実体にそぐわないとして、「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」が出され議論を呼んでいます(平成28年11月15日付。日本弁護士連合会のホームページをご参照ください)。

 

Q3.義務者が婚姻費用を支払ってくれない場合、義務者に対して支払いを請求するにはどうすればいいのですか。

A3.
 義務者が婚姻費用を支払ってくれない場合や、支払っていても双方が合意した金額や、算定表から導き出される額よりも低額な場合には、まず、家庭裁判所に対し、婚姻費用の分担の“調停”の申立てをすることが考えられます。調停では、家庭裁判所の調停委員を交えて、相当な額の婚姻費用が支払われるよう話合いをし、当事者間で合意することを目指します。

 調停で合意をするに至らなかった場合には、家庭裁判所の審判官による審判で、義務者が権利者に支払うべき相当な額の婚姻費用が決められることになります。なお、婚姻費用の分担の調停は、別居後の離婚調停に付随して申立てられることが多いです。

 

Q4.別居してからしばらくたちますが、婚姻費用を支払ってもらっていません。別居した過去の分も遡って請求することができますか。

A4.
 別居開始後何年もたってから、別居開始時以降の婚姻費用の全部の支払いを認めるのは義務者にとって酷である等の理由から、実務では、婚姻費用分担の調停や審判を申し立てるなど、権利者が義務者に対して請求したときから請求できると考えることが多いようです。
 この考えにたつと、原則として、別居開始時までさかのぼって請求することはできなくなります。
 したがって、別居開始後は早期に義務者に対し婚姻費用の分担の請求をする必要があります。

 

Q5.権利者が子供を連れて一方的に別居した場合でも、婚姻費用は支払わなければなりませんか。

A5.
 権利者が有責配偶者にあたることが明らかなケース(不貞をしていた場合など)には、そのような権利者からの婚姻費用の分担請求は認められない場合があります。

 もっとも、別居した原因が一方的に権利者にあるとしても、子供には責任がないため、婚姻費用のうち子供の養育に関する部分については、義務者が負担しなければならないと考えられます。