パワーハラスメントと裁判例

カテゴリー
ジャンル
1 パワーハラスメントとは
 パワーハラスメント(パワハラ)は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されます。セクハラと同様、裁判において違法なパワハラ行為と判断された場合には、加害者本人が不法行為責任を負うのみならず、一定の場合には、事業者も賠償責任を負う可能性があります。

 
2 賠償額に関する裁判例の傾向
(1)裁判例としては、以下に該当する場合には、高額な慰謝料が認められやすい傾向にあります。

 ・自殺に追い込まれるほどパワハラの程度が重い事案

 ・パワハラ行為が原因で精神疾患等を発症した事案

 特に被害者が自殺に至ったような事案では、高額の慰謝料が認められるのみならず、被害者の逸失利益についても損害として認定されることになり、全体の賠償額が1000万円を超える場合もあります。

(2)逆に、暴行・暴言等があった場合であっても、その継続性を欠き、負傷の程度や精神的損害も軽い事案や被害者側の態度等にも問題があったと認められる事案では、5万円から20万円程度の低額の慰謝料にとどまる場合が多いようです。

 
3 高額認定事案
 高額の損害賠償が認められた裁判例として以下のものがあります。

事例1 名古屋地裁平成17年4月27日判決

 被告福祉会の職員である原告が原告の職場である施設で開催された職員会議において、被告A~Eを中心とする職員らより、組織ぐるみで誹謗・非難された結果、精神的疾患に罹患した上、いわゆるPTSDを発症し、精神的損害を被るとともに、判決現在までの約2年半の間休職を余儀なくされたとして、被告らに対し損害賠償を求めた事例。

 認容額:1327万5856円(慰謝料500万円)

 ※原告が逸失利益について明示的に主張しなかったため、慰謝料の算定上考慮。

  休職により支払われなかった月例賃金や期末手当等を損害と認定。

 

事例2 横浜地裁川崎支部平成14年6月27日判決

 原告らの長男であるAが被告川崎市の水道局工事用水課に勤務中、同課課長である被告B、同課係長である被告C及び同課主査である被告Dのいじめ、嫌がらせなどにより精神的に追い詰められて自殺したとして、原告らが、被告川崎市に対し、国家賠償法又は民法715条に基づき損害賠償を、被告B、同C及び同Dに対し、同法709条、719条に基づき損害賠償をそれぞれ求めた事例。

 認容額:2345万9416円(慰謝料720万円)

 ※高額な逸失利益を認定。

 

事例3 さいたま地裁平成16年9月24日判決

 原告らの長男であるAが、勤務する被告病院の職場の先輩である被告Bらのいじめが原因で平成14年1月24日に自殺したとして、両親である原告らが、被告Bに対し、いじめ行為による不法行為責任(民法709条)を理由に、被告病院を設置する被告Cに対し、雇用契約上の安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)を理由に、損害賠償金の支払を請求した事例。

 認容額:1000万円(慰謝料1000万円)(使用者の賠償額は500万円)

 ※本件では原告は慰謝料のみ請求。