Q1.信託法はなじみが薄いのですがどのような法律ですか。 A1. 信託法は、平成18年12月15日に改正され、平成19年9月30日から施行されています。信託法の改正要綱試案においては、信託法が「商事信託」分野のみならず、少子高齢化社会の進展に伴い今後はその社会的重要性が一層高まることが予想される「民事信託」分野、さらには民間ボランティア活動の受け皿としての発展が期待される「公益信託」分野など、信託利用のあらゆる場面を見据え、現在及び将来の社会的経済的ニーズに柔軟かつ的確に対応できるルールの法制化を目指していることが示されました。 Q2. そもそも信託とはなんですか。 A2. 信託とは、 ①信託設定者(委託者)が信託契約や遺言などによって信頼できる人(受託者)に対して、土地や金銭などの財産を移転し、 ②受託者が委託者の設定した信託の目的に従って信託の利益を受ける者(受益者)のためにその財産の管理・処分などをする制度です。 Q3. 民事信託と成年後見制度では何が異なりますか A3. 民事信託では高齢者の柔軟な資産管理が可能となります。 すなわち、成年後見制度の利用では、本人判断能力低下後は相続税対策や積極的な資産運用はできなくなりますが、信託では、元気なうちから資産の運用・処分方針等を決定した上で、信託契約において信頼できる親族等を受託者として資産を預け、これらを実現することが可能となります。これにより、成年後見制度の利用では実現できなかった相続税対策・資産承継対策が講じられるようになるのです。 Q4. 民事信託と相続の関係はどうでしょうか A4. 民事信託では法定相続にとらわれない資産承継・事業承継の対応が可能となります。通常の遺言であれば、自己の資産を誰に相続させるかという一世代(一回限りの財産の移転)までしか資産の承継先を指定できません。 したがって、それを引き継いだ者が更にその先どのように資産を承継させるかを拘束することは想定できません。しかし、信託の仕組みを導入することで、通常の遺言では無効とされていた二次相続以降の財産承継先の指定ができ、資産承継(事業承継)の道筋を自分の意思で作り上げることができます。 Q5. 民事信託で遺留分の争いは防げますか A5. 民事信託で遺留分の争いを防ぐことができます。 例えば、一つの不動産が遺産の大半を占めるようなケースでは、遺言でその不動産を共同相続人の一人に引き継がせても、代償財産がない以上、他の相続人からの遺留分の主張には対応できなくなります。また、遺言がなく不動産を数名の共同相続とすると、共有の不動産は共有者全員の同意・協力なしには換価処分ができないので、意見の異なる相続人間で紛争の温床となります。 そこで、その不動産を信託財産とする信託を設定し、管理処分権限を受託者に委ね、共同相続人間で受益権を共有化することで、遺留分の紛争を防いだり、不動産の換価処分、有効利用などで柔軟な対応が取れるようになります。 Q6. 民事信託の具体的な活用例がないとイメージが湧かないのですが。 A6. 次回から活用例をご紹介します。 |