民法改正(4)~保証について その2~
これまで、保証人になろうとする者が、保証人になることの意味やそのリスク、具体的な主債務の内容等について十分に理解しないまま、情義に基づいて安易に保証契約を締結してしまい、その結果として生活の破綻に追い込まれることが少なくないと指摘されてきました。
そこで、今回の民法改正により、事業用融資の保証契約については、その締結日の前1か月以内に、公証人があらかじめ保証人になろうとする者から直接その保証意思を確認して公正証書(保証意思宣明公正証書 ※1)を作成しなければ、効力を生じないとする規定が新設されました。
1 制度の概要
事業のために(※2)負担した貸金等債務(※3)について、個人が保証契約を締結する場合、事前に公証人が保証人になろうとする者の保証意思を確認し、保証意思宣明公正証書(※4)を作成しなければならず、この手続を経ていない契約は効力を生じません(改正民法465条の6)。
個人保証の保証人が取得する求償権を個人が保証しようとする場合も同様です(改正民法465条の8等)。
※1 保証意思宣明公正証書は、保証契約締結の日前1カ月以内に作成されている必要があり、それ以前に作成されても、保証契約は有効になりません(改正民法465条の6第1項)。
※2 「事業のために」
事業とは、一定の目的をもってされる同種の行為の反復継続的遂行をいいます。
※3 「事業のために負担した貸金等債務」
借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味します。同債務に該当するか否かは、借主がその貸金等債務を負担した時点を基準時として、貸主と借主との間でその貸付等の基礎とされた事情に基づいて客観的に定まります。
※4 保証意思宣明公正証書に執行承諾文言を付し、執行証書とすることはできません(付帯決議参照)。
2 例外
主債務者の事業状況を十分に把握しうる立場にあり、類型的に保証リスクを十分認識せずに保証契約を締結するおそれが低いと考えられる以下の者については、上記の公証人による意思確認は不要です(改正民法465条の9)。
<主債務者が法人の場合>
①主債務者の理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者(※5)
②主債務者が株式会社である場合、当該株式会社の議決権の過半数を直接・間接に支配する者
③主債務者が株式会社以外の法人である場合、②に準ずる者
<主債務者が個人の場合>
①主債務者と共同して事業を行う者
②主債務が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者(※6)
※5 理事等に該当するかは、形式基準説の考え方から、法律上正式に理事、取締役、執行役の地位にある者をいい、その役割を法律上または事実上代行している者などは含まれません。
「準ずる者」の範囲についても、法律上正式に法人の重要な業務執行を決定する期間又はその構成員の地位にある者に限られます。
※6 事業に現に従事している主債務者の配偶者
「配偶者」は、法律上の配偶者をいい、事実婚の配偶者は対象外。
「事業に現に従事している」とは、保証契約時に個人事業主が行う事業に実際に従事しているといえることが必要であり、単に書類上又は一時的に事業に従事するだけでは足りません。