侮辱罪の法定刑が引き上げられました

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Q1:侮辱罪と名誉棄損罪は何が違うのですか。
A1:

両罪は、「具体的事実の適示」を伴うか否かの点で差異があります。例えば、Aさんには「前科がある」というのは、それが本当であれフェイクであれ一定の具体的事実を示してAさんの社会的評価を下げています。他方、Aさんは「馬鹿だ」というのは同じく評価ですが、それは発言者の主観的評価であって抽象的な表現にすぎません。

このように人の名誉を傷つける程度が異なることから、法定刑は、名誉棄損罪は「3年以下の懲役もしくは禁固又は50万円以下の罰金」であるのに対し、侮辱罪は「拘留または科料」とされ刑法犯の中では最も軽い部類でした。


Q2:しかし近時、SNSなどの利用が増え、人の名誉を傷つける事例が多いと思います。
A2:

インターネットの発達に伴って社会環境が大きく変わりました。特に匿名の誹謗中傷は、先行する書き込みを受けて次々と書き込みがなされ、過激な内容の書き込みについての心理的抑制が効かなくなり、その結果具体的事実を示すか否かに関わりなく、広範な人々が他人の名誉を侵害することになってしまいます。

そこで2022年(令和4年)6月13日、刑法の一部を改正する法律が成立しました。この改正法では、悪質な侮辱行為の抑止を図るとともに、悪質性の低い事案も想定されることから、侮辱罪の法定刑を「1年以下の懲役もしくは禁固もしくは30万円以下の罰金」とするとともに「又は拘留もしくは科料」を残し柔軟な対処を図ることとされました(改正後の刑法231条)。


Q3:法定刑を上げただけで抑止効果はあるのでしょうか。
A3:

改正により被疑者に対する通常逮捕、現行犯逮捕が制限なくできるようになりました。また、侮辱罪の教唆(そそのかし)・ほう助(手助け)も処罰されるようになりました。


Q4:侮辱罪の法定刑の引き上げについては、表現の自由に対する萎縮効果が懸念されないでしょうか。
A4:

衆議院法務委員会での審議において表現の自由に対する制約となるおそれを踏まえた議論が行われ、その結果改正法の附則に、表現の自由に対する配慮も必要で、今後3年を経過したときに施行状況を検証することが明記されました。


Q5:改正法の施行日はいつですか。
A5:

公布の日から起算して20日を経過した日から施行するとされ、2022年(令和4年)7月7日に施行されています。