~大麻施用罪の新設等~
1 はじめに
令和6年12月12日に大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律が施行され、大麻等の不正な施用についても「麻薬及び向精神薬取締法」の「麻薬」として禁止規定及び罰則(大麻施用罪※)が適用されることとなりました。
以下、大麻の施用に関する従前の取り扱い、法律改正の経緯並びに改正後の大麻施用に関する規制についてご説明します。
※施用(せよう)とは、医療や法律分野では、薬物を体に投与することを指します。
一般的に大麻「使用」罪と表記されることが多いですが、ここでは法律上の文言に従い、大麻施用罪と表記します。
2 改正前の大麻施用に関する取扱い
大麻には、テトラヒドロカンナビノール(THC)という、脳に作用する成分が含まれており、使用すると酩酊感、陶酔感、幻覚作用などが発現し、依存性があります。
しかし、これまでは、麻薬や向精神薬と異なり、大麻の単純な使用を処罰する規定は存在しませんでした。もっとも、現行法上、大麻の施用を取り締まる規定がないことを正当化する確固たる根拠はありませんでした。
そして、近年、若者を中心に大麻による検挙者が増えているところ、令和6年の検挙人数は6342人であり、これは平成27年の1049人と比較して4.4倍に増加しています。これについて、大麻の施用に関する処罰規定がないことが、大麻の危険性が他の違法薬物等と比較して低いという誤った認識を若年層に与えることとなり、若年層の大麻の乱用を助長しているという指摘がなされていました。また、大麻の施用が明らかな場合であっても、その所持に関する証拠が十分でない場合にはその取締りが行えないという実務上の問題点もありました。
3 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法改正
上記の問題点を解決するため、令和6年12月12日施行の改正「麻薬及び向精神薬取締法」により、新たに大麻の単純な使用が処罰の対象となり、7年以下の拘禁刑が罰則として科されることになりました(営利目的の大麻の施用は、1年以上10年以下の拘禁刑若しくは情状により300万円以下の罰金又はその両方が科されます)。
更に、これまで5年以下の拘禁刑とされていた大麻の単純所持・譲渡・譲受罪の罰則が、7年以下の拘禁刑に引き上げられました(営利目的の所持・譲渡・譲受は、1年以上10年以下の拘禁刑若しくは情状により300万円以下の罰金又はその両方が課されます。)。
【改正麻薬及び向精神薬取締法】
第27条
麻薬施用者でなければ、麻薬を施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬を記載した処方せんを交付してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りではない。
一 麻薬研究者が、研究のため施用する場合
二 麻薬施用者から施用のため麻薬の交付を受けた者が、その麻薬を施用する場合
三 麻薬小売業者から麻薬処方せんにより調剤された麻薬を譲り受けた者が、その麻薬を施用する場合
4 まとめ
大麻乱用のきっかけの多くは、周囲の人間からの勧誘です。また、近年では、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで、気軽に大麻が売買されていることがあり、軽い気持ちで大麻の所持や施用をしてしまう若者が増加しています。
上記のとおり、現在、大麻の施用が処罰の対象となり、所持・譲渡・譲受についても厳罰化されています。さらに、大麻の施用によって一度依存症に陥ってしまうと、本人の意思や家族の努力だけでその問題を解決することは困難です。大麻や違法薬物の施用や所持に巻き込まれそうになった場合には、必ず警察や各都道府県に設置されている相談窓口に相談を行い、一人で抱え込まないようにすることが肝要です。