1.会社法の改正
改正会社法は、平成27年5月1日から施行されています。
改正の内容は、大きく分けて、①企業統治のあり方(コーポレート・ガバナンスの強化)、②親子会社に関する規律の整備、③その他に分かれますが、ここでは①についてご説明します。
2.コーポレート・ガバナンスの強化
(1)社外取締役を置くことが相当でない理由の説明
取締役会の業務執行者に対する監督機能強化を目的として、社外取締役をより積極的に活用すべきであるとの指摘が強く出されていました。改正法では、監査役会設置会社(公開会社であり、かつ大会社であるものに限る)であってその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないこととされました。
なお、東京証券取引所においては、「上場会社は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない。」とする有価証券上場規程を平成26年2月10日から施行しています。
(2)監査等委員会設置会社制度の創設
現行法では、機関設計として監査役会設置会社および委員会設置会社がありますが、改正法は、これらに加えて、社外取締役の業務執行者への監督機能を活用する新たな機関として監査等委員会設置会社を設け、この会社では監査役を置くことはできないとされました。監査等委員会は、名称はまぎらわしいのですが、監査等委員である取締役3人以上で組織され、その過半数、つまり最低2名の社外取締役を選任する必要があります。監査を担うのが社外取締役となることで、取締役会の決議に参加できるので、従来の監査役に比べて権限が大きく法令順守や適切な会計処理など業務運営を監視することができるのです。
(3)社外取締役等の要件の見直し
現行法では、①当該会社の親会社等の関係者や、当該会社の業務執行者の親族であっても、社外取締役となることができる一方で、②過去に一度でも会社の使用人になる等して当該会社の業務執行者の指揮命令系統に属したことがある者は、社外取締役になることができませんでした。
改正法では、①については社外取締役の要件を厳格化し、会社の親会社等の関係者(社外取締役も含む)および兄弟会社の業務執行者や、会社の業務執行者等の配偶者または2親等内の親族は、当該会社の社外取締役となることができないこととするとともに、②については、就任前における会社またはその子会社との関係に係る要件(過去要件)の対象となる期間を原則として10年間に限定することとしました。社外監査役の要件についても、以上の社外取締役の要件と同様の改正を行っています。
(4)会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定
現行法では、監査役設置会社においては、株主総会に提出される会計監査人の選解任等に関する議案等の決定は取締役または取締役会が行うこととしつつ、監査役または監査役会は、会計監査人の選解任等に関する議案等についての同意権および提案権を有することとされていました。
しかし、このような規律は、会計監査人の独立性を確保するという観点からは、必ずしも十分ではないとの指摘がされていました。そこで、改正法では、会計監査人の選任・解任等に関する議案の内容は、取締役や取締役会ではなく監査役または監査役会が決定することとしています。
(5)その他、資金調達の場面におけるコーポレート・ガバナンスの在り方に関する改正がありますが、ここでは割愛します。