名古屋市の自転車条例(「名古屋市自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」)
Q1 名古屋市が自転車の利用に関する条例を制定・施行したとのことですが、条例制定の背景はどこにありますか。
A1
自転車は便利な乗り物ですが、スマホを利用しながら自転車を運転するなど交通ルールを守らない自転車利用者も多く、社会的に問題になっています。2016年の統計では、全国の自転車と歩行者の事故は2281件、自転車と自転車の事故は8万6987件、交通事故全体に占める自転車事故の割合は18.2%となっています。
また、自転車事故で相手方を怪我させた事案で、高額の損害賠償を命じる判決が相次いでいます。そこで、名古屋市では自転車の安全で適正な利用を促進し、交通事故の減少を図るとともに、自転車事故による被害者の保護を図るため、「名古屋市自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を制定したのです。
Q2 条例のポイントは何ですか。
A2
第1に、地域・家庭・職場での交通安全教育を実施し、自転車利用時の交通ルール・マナーの向上に努めるものとしています。
第2に、65歳以上の自転車利用者にヘルメットの着用を勧めています。
第3に、自転車損害賠償保険等の加入を義務化しました。
Q3 自転車損害賠償保険等とは?
A3
自転車の交通事故により生じた他人の損害を填補する保険又は共済を言います。この保険は、自転車向け個人賠償責任保険のほか、自動車保険や火災保険の特約、会社等の団体保険、TSマーク付帯保険(自転車安全整備店で点検整備を行い基準に合格した自転車につけられる保険)等様々な種類があります。
Q4 どうして保険加入が義務化されたのですか。
A4
近年、自転車事故で相手方を死傷させた事案で、以下のような高額の賠償義務を命ずる判決が相次いでいます。被害者の保護を図り、また思わぬ高額の賠償義務を負った加害者の経済的負担を軽減するために義務化が導入されたのです。
①自転車同士の事故で被害者に言語機能の喪失等重大な障害が残った事案
9266万円(東京地裁平成20年6月5日判決)
②自転車と歩行者の事故で被害者が頭蓋骨骨折等により意識が戻らない状態となった事案
9521万円(神戸地裁平成25年7月4日判決)
③自転車と歩行者の事故で被害者が死亡した事案
4746万円(東京地裁平成26年1月28日判決)
その他、1000万円~2000万円の認容判決多数
Q5 保険加入の対象者は誰になりますか。
A5
名古屋市内で自転車を利用する場合に該当しますので、名古屋市外から通勤・通学で市内に入る場合も対象となります。そして保険加入の義務は、自転車を所有する世帯に対して課せられます。
また、事業者は、事業活動のため従業員に自転車を利用させるときは、当該自転車の自転車保険に加入する努力義務が課せられています。
Q6 保険に加入しない場合の罰則はありますか。
A6
今のところありません。
Q7 この条例はいつから施行されていますか。
A7
条例自体は平成29年4月1日からですが、保険の義務化は同年10月1日から施行されています。