Q1、刑事事件で日本型「司法取引制度」が導入されたと聞きましたが、どのような制度ですか。
A1、
検察官と被疑者・被告人との間で、他人の犯罪事実を明らかにするための供述をすることと引き換えに、不起訴や求刑を軽くすることを協議し、合意することを認める制度です。
平成28年の刑事訴訟法改正で導入され(同法350条の2以下)、平成30年6月1日から施行されました。
Q2、司法取引の協議・合意に弁護人の関与は必要ですか。
A2、
合意をするためには弁護人の同意が必要です。合意に至る協議も、原則として検察官と被疑者・被告人および弁護人との間で行います。
Q3、協議・合意の対象となる犯罪は限定がありますか。
A3、
対象犯罪は、贈収賄、独占禁止法違反などの経済犯、薬物・銃器犯罪、公務執行妨害罪など特定の犯罪に限定されています。
Q4、制度の導入にはどのような狙いがあるのですか。
A4、
捜査機関が被疑者・被告人を不起訴や処罰軽減することと引き換えに、他人の犯罪についての供述を得ることが容易になり、組織的犯罪等の首謀者に対する捜査に役立たせることができます。また、企業の関与する経済財政犯罪については、社員の協力を得ることにより、上層部や企業自体の刑事責任を問うことができるようになります。
Q5、デメリットは何ですか。
A5、
被疑者・被告人が自分の罪を軽くするため、関係ない人や他の共犯者に罪をかぶせ虚偽の自白をする可能性があります。そのため冤罪の発生が危惧されます。
Q6、アメリカなどで行われる「司法取引」とはどこが違うのですか。
A6、
アメリカの「司法取引」には、「自分の犯した犯罪」について一部認める代わりに、その他の犯罪については起訴しないあるいは処罰を軽減する制度が含まれています。またアメリカでは、起訴された事件についても約8割が司法取引で終了していると言われています(いわゆる裁判所における有罪答弁によるアライメント制度)。これに対し、今回の日本の制度では、「他人の犯罪」について捜査側に協力することにより、自分の犯罪について不起訴あるいは処罰の軽減を認めるものです。
そこに他人に罪をなすりつけ、自分の罪を軽くしたいとの人間の心理に根ざした供述と、その供述がほしい捜査官の誘導が働き、冤罪の温床となる危険があるといえるのです。