その3:一部分割の規律の明文化
今回の改正では、遺産分割に関する見直しとして、一部分割に関する規律が明文化されています。
1、現行法の問題点
現行民法907条では、第1項が「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で遺産の分割をすることができる。」と規定し、また、第2項は「共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。」と規定しており、相続財産の一部の分割協議、調停、又は審判が許容されるか、明文上は必ずしも判然としていませんでした。
2、改正法の概要
■改正民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)
1.共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2.遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
改正法は、現行民法1項の「遺産の分割」を「遺産の全部又は一部の分割」に、現行民法2項の「その分割」を「その全部又は一部の分割」に規定を変えて、相続財産の一部の分割協議、調停、又は審判が許容されることを明文化しました。
もっとも、2項に但し書きを追加し、特別受益や代償金・換価等を検討した場合に、残部の分割において、最終的に適正な分割を達成し得るという明確な見通しが立たず、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には、家庭裁判所に一部分割を求めることはできないとされています(907条2項ただし書)。