相続法改正(2)~遺産分割に関する見直し~その4

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その4:遺産分割前の財産処分に関する規律の創設

今回の改正では、遺産分割に関する見直しとして、「遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲」の規定が創設されています。

(1)現行法の問題点(分割前に処分をした相続人が得をしてしまう)
 共同相続された相続財産については原則として遺産共有となります(民法898条)。この遺産共有の状態を解消するためには、遺産分割が必要になりますが、遺産分割前に、遺産共有となった遺産について共同相続人がその共有持分を処分することは禁じられていません。そして、処分がされた場合にその後の遺産分割においてどのように処理すべきかについては明文の規定はありません。
 そのため、遺産の分割前に遺産の全部または一部が処分された場合、現行の実務では、その処分された遺産については遺産分割の対象にならないとされてきました(現に残っている遺産のみを分割することになります)。
 しかしながら、特に処分した者が共同相続人である場合、その相続人は遺産分割において処分で得た利益分を差し引かれることなく、他の相続人と同じ条件で遺産の取り分を受け取ることができ、結果的に他の相続人より多くの遺産をもらえるという不公平が生じることになります。

(2)改正法の概要(分割前に処分された財産も分割の対象となる)
 そこで、改正法は、遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合について遺産の範囲に関する規律を創設しました。現行民法906条の後に、以下の条項が付け加えられます。
 ■改正法906条の2(遺産の分割前に遺産に属する財産が
 処分された場合の遺産の範囲)
1.遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2.前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

この規定により、共同相続人の一人が、遺産分割が終了するまでの間に、遺産に属する財産を処分し、当該財産が遺産から逸出した場合であっても、遺産分割の時においてなお存在するものとみなして、遺産分割を行うことが可能となります。
 この規定の趣旨は、従前の判例法理を明文化したものと言われています。すなわち、従前の判例法理では、特定の相続人が遺産分割前に相続財産を処分した場合、処分された財産は相続財産から逸失し、当該相続人は持分に応じた代金債権を取得するだけであって、当該代償財産(処分により得られた財産)は原則として遺産分割審判の対象にならないとされていました(最高裁第二小法廷昭和52年9月19日判決)。その一方で、当該代償財産についても、一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象財産に含めるという共同相続人全員の合意があるなどの特別の事情がある場合には遺産分割審判の対象とすることができる(最高裁第一小法定昭和54年2月22日判決)とされていました。
 今回の改正は、このような判例法理を明文化することで、共同相続人間において円滑に公平な合意を成立しやすくするために設けられたものだといえます。