相続法改正(3)~遺言制度に関する見直し

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1 自筆証書遺言の方式の緩和
 現行の民法では、自筆証書遺言(公証役場で作成する公正証書遺言とは違い、被相続人が単独で作成できる遺言です)は、全文、日付及び氏名を自署して押印しなくてはならない(現行民法968条1項)とされていましたが、改正民法では、「財産目録」については、自署でなくてもよいとされました(改正民法968条2項)。
 そのため、財産目録については、パソコンによる作成、不動産の登記簿謄本や預貯金通帳のコピーを使用してもよいこととなりました。
 但し、偽造等を防止するために、目録の全頁(両面に記載があるときには両面)に、署名と押印をしなくてはなりません。

2 自筆証書遺言の加除・訂正方法
 自筆証書遺言の加除・訂正等の変更方法については、「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければその効力を生じない」とされています(現行民法968条2項)。例えば「2000万円」を「2000円」と書いてしまった場合に、これを訂正するには、「万」を加えた上で、「この行1字加入」などといずれも自筆で記載した上、署名し、変更場所に押印しなくてはなりません。
 改正民法における上記1のパソコン等で作成した目録の加除・訂正等の変更については、自筆でなくともよいとされています(「署名」と「変更場所に押印」は必要です。自筆も可。)。

3 自筆証書遺言の保管制度の創設
(1)制度の概要
 改正民法下では、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という新しい法律ができ、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度ができます。
 現行民法では、自筆証書遺言は、裁判所の「検認」という手続きを経なくてはいけません。「検認」は、相続人に対して、遺言が存在することを知らせる手続きであると共に、遺言の形状、状態等の現状確認を行うための手続です。この「検認」の手続を経なければ、不動産の登記名義を変更させることもできませんし、預金を解約することもできません。但し、公正証書遺言に関しては、この「検認」の手続は不要とされています。
 改正民法では、この制度を利用した自筆証書遺言については、「検認」が不要とされることとなりました。
 (2)制度の利用
 この制度を利用して自筆証書遺言を法務局に保管してもらっている際には、遺言者は、いつでも遺言の閲覧をすることができますし、保管の申請を撤回し、遺言の返還を求めることもできます。
 相続開始前は、遺言を閲覧できるのは、遺言者本人のみに限られます。
 相続開始後は、相続人が法務局に対して「遺言書情報証明書」という書類(保管された遺言書は、画像情報等所定の事項を記録したデータでも保管されますので、このデータとして記録されている事項を証明する書類となります)を交付するよう請求することができ、原本を閲覧することもできます。相続人はこの「遺言書情報証明書」により、不動産の登記を変更することが可能となります。
 また、この制度利用には、手数料を収入印紙で納めなくてはなりません。

4 施行日
 自筆証書遺言の方式の緩和(上記1及び2)については、平成31(2019)年1月13日から施行されています。
 自筆証書遺言の保管制度は、令和2(2020)年7月10日から施行されます。