親子の扶養義務について

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Q、
 先日、兄から「母が入所している介護施設の費用を負担してほしい」と言われ、兄が介護施設に今まで支払った費用の半額を請求されました。兄の請求に応じなくてはいけないのでしょうか?

 父は既に他界しており、兄弟は兄と私の2人です。また、私にも、妻と未成年の子2人がいて、自分の家族を養わなくてはなりませんので、兄から請求をされても、支払う余裕はありません。

A、 

1、法律上、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があるとされています(民法第877条1項)。そのため、お母さんの直系血族に該当するあなたもお兄さんも、法律上の扶養義務者に該当します。
 ただし、①お母さんを扶養する必要性があること(要扶養状態)と、②あなたがお母さんを扶養することができる状況にあること(扶養可能性)によって、具体的にあなたに扶養義務が発生することとなります。
 ①については、例えば、お母さんに老人介護施設の費用を支払うことのできる資産や年金収入がある場合には、当然にあなたに扶養義務が発生するわけではありません。
 ②についても、あなたの収入や資産状況からして、あなたの家庭(妻と子2人)を維持するのが精一杯である場合などは、お母さんが要扶養状態にあったとしても、あなたに具体的な扶養義務が発生するとは限りません。

2、ところで、「扶養義務」と言っても、法律でその内容が明確に定められているわけではありません。法律上は、扶養の順位や扶養の程度又は方法について、協議が調わないとき又は協議が出来ないときは、家庭裁判所が定める(民法第896条、同法第897条)とされています。
(1)一般的には、扶養義務は生活保持義務(扶養義務者の生活水準と同程度に維持する義務)と生活扶助義務(扶養義務者の生活に余力がある場合に、その余力をもって扶養権利者を扶養する義務)に区別されますが、老親と成年の子の場合には、生活扶助義務で足りるとされています。
(2)扶養の方法には、①経済的な支援、②衣食住に必要な現物を提供する方法、③引取りによる扶養、の3つがありますが、①経済的な支援が原則となります。
(3)また、判例・実務上、扶養義務者が数人いる場合に、そのうちの一人が扶養料の支払いをした後、他の扶養義務者に対して、立替扶養料(その者の扶養義務を超える分)の支払を請求することができるとされています。

 3、今回のケースでも、あなたは、お母さんの扶養義務者に該当しますが、あなたの妻及び子2人に対しても、当然、別の扶養義務がありますので、あなたが自身の家族を養うので余力がないということであれば、お母さんに対する具体的な扶養義務は発生せず、法律的には、お兄さんの請求に応じる必要はないということになります。
 仮にあなたに扶養可能性がある場合で、お母さんも要扶養状態にある場合には、法律上は、お兄さんの請求に対して一定程度支払う必要がでてくるかもしれません。しかし、その範囲は、お兄さんの経済的事情やあなたの経済的事情等も考慮して、決めなくてはなりませんので、2人兄弟だから、当然に半額負担となるわけではありません。
 お兄さんとの話し合いで負担額を決めることができればいいのですが、そうでない場合は、家庭裁判所の調停・審判手続きを利用するなどして、解決を図る必要が出てくるかもしれません。