株式会社における各種書類の閲覧等請求権

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 私はA会社の株式を20%持っている株主ですが、A会社の取締役の経営方針に不満を持っています。
 そこで、以下の書類を取り寄せたいと思いますが、可能でしょうか。

 
1、株主総会の議事録

Q1、私は、A社の取締役の報酬が高いと思っています。そこで、過去に行われた株主総会で取締役の報酬がどのように提案され、また議論されて決定したかを確かめたいと思います。株主総会の議事録はどのように取り寄せればいいのでしょうか。

A1、
 株主総会でどのようなことが話し合われ、決議をされたかは、株主の最大の関心事です。そこで会社法は、株主総会の議事・決議の内容につき議事録を作成しなければならないこととしています(会社法第318条第1項)。また、株主総会議事録は本店所在地において株主総会の日から10年間備え置かなければなりません(同条第2項)。そして株主は、会社の営業時間内であればいつでも株主総会議事録を閲覧・謄写することができます(同条第4項)。

 
2、取締役会の議事録

Q2、A社の取締役はB社と資本提携しようとしており、A社がB社の支配下に置かれるのではないかと危惧しています。そこで取締役会の議事録を見たいのですが許可されますか。

A2、
 会社法第371条第2項は、「取締役会設置会社」の株主に取締役会議事録の閲覧・謄写請求を認めています。ただし、株主が「その権利を行使するため必要があるときは」と限定されており、議事録をすべて閲覧・謄写できるわけではありません。会社が、株主の権利行使と関係がないと判断すれば、議事録の一部の閲覧・謄写を拒むことができます(この点について会社と争いになれば、最終的には裁判所が判断することになります)。
 また、議事録の閲覧・謄写は、取締役会で行われていることをチェック(監視)することを目的としていますので、監視機関が設けられている場合は、1次的にはその機関がチェックすべきことになります。そこで会社法第371条3項は「監査役設置会社」などにおいては、株主が取締役会議事録を閲覧・謄写請求しようとするときは、そもそも裁判所の許可を得る必要があるとしています。その意味では、株主であるからと言って、何でも閲覧・謄写できるわけではありませんので、注意が必要です。

 
3、計算書類等

Q3、A社の事業成績と財務状況を明らかにし、B社との資本提携が真に必要かを確かめるため、A社の会計関係の書類を閲覧・謄写したいのですが、どうしたら良いですか。

A3、
 会計関係の書類といっても抽象的です。
 まず、「計算書類」とは、①貸借対照表、②損益計算書、③株式資本等変動計算書、④個別注記表(会社法第435条第2項)をいい、⑤事業報告書、⑥付属明細書を含めて「計算書類等」といいます(会社法第436条第1項、442条)。
 計算書類等は、株主にとって会社の事業活動を知るもっとも重要な書類ですので、持ち株数、保有期間に関係なく、株主は会社の営業時間内であれば何時でも、それらの閲覧し、謄本又は抄本の交付を請求することができます(会社法第442条第3項)。

 
Q4、株主総会で配布されるような計算書類ではなく、その基となる具体的な帳簿を見たいのですが。

A4、
 「会計帳簿」とは、日々の取引などを記録したもので、元帳、仕訳帳、伝票といった形で作成されているものです。しかし、会計帳簿をいつでも閲覧・謄写できるとすると、会社の営業上の秘密が漏えいし、会社の将来の営業活動が阻害されたりして、会社の利益を損なう場合があります。そこで会社法は、以下のような制限を課しています。
ア、閲覧・謄写請求ができる株主を、総議決権の100分の3以上、または自己株式を除く発行済み株式の100分の3以上を保有する株主に限る(会社法第443条第1項)。
イ、株主が会計帳簿等を利用する目的が、保護に値しないような場合は、会社は閲覧・謄写請求を拒むことができる。(会社法第443条第2項参照)。
ウ、そして、会社が株主の閲覧・謄写請求拒絶事由の有無を判断しやすいように、会計帳簿の閲覧・謄写請求を行う者は、その理由を明らかにしなければならないとされています(会社法第433条第1項後段)。


Q5、会社が会計帳簿の閲覧・謄写請求を拒絶した場合には、どうしたらいいですか。

A5、
 裁判所に対し、閲覧等請求訴訟を提起することになります。
 また、緊急性がある場合は、閲覧等の仮処分を求めることになります。