国際ロマンス詐欺にご注意ください!

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  ~メッセージの相手はどこの誰ですか?~



1、国際ロマンス詐欺とは

近時、匿名性の高いSNSやマッチングアプリ等で知り合った者から、恋愛感情や親切心に付け込んで、投資話を持ちかけるなどして、金銭の支払を求められる詐欺被害(国際ロマンス詐欺)が多発しています。

国際ロマンス詐欺は2010年代後半頃から被害報告が増えるようになった比較的新しい詐欺の手法ですが、近時の新型コロナウイルス禍において、オンライン上での出会いを求める消費者の増加もあってか、2020年頃から相談件数が急増しています(2021年度の相談件数は新型コロナウイルス禍前の約40倍と報告されています)。

国際ロマンス詐欺の典型的な事案は下記2のようなものです。

 

2、国際ロマンス詐欺の典型事案

結婚投資話をもちかけるフランスの軍人”

被害者Aさん(24歳・会社員・女性)は、マッチングアプリを利用していたところ、フランス人の軍人だという男性B(実際にはフランス人なのかも軍人なのかも男性なのかもわかりません)からメッセージをもらい、メッセージのやり取りを通じて徐々に親しくなっていった。BはAさんに対し、「あなたとの結婚も考えている。」「将来の2人のための費用を貯めよう。」「いう通りにすれば確実に利益が出てお金が稼げる。」などと言い、仮想通貨○×コインによる投資話を持ちかけてきた。

Aさんは仮想通貨のことはよくわからず不安に思ったが、Bに嫌われたくないとの一心で、Bの指示にしたがって、50万円をBの指定する口座に振込送金し、これとは別口で100万円分の〇×コインをインターネット上の投資サイト(海外取引所)で購入の操作をしてBに送金手続をとった。その後しばらくは、Bから投資で利益を上げたなどとの連絡があったが、次第に連絡が少なくなっていったため、Aさんが預けた金銭を返金するように求めたところ、そこからBと一切連絡がとれなくなってしまった

なお、その後Aさんは、〇×コインを購入した投資サイトから返金を求めようとしたが、投資サイトを見つけることはできなかった。インターネットで調べたところ、どうやらその投資サイトは架空の業者であり、Aさんと同様の被害に遭った人が多数いるようであった。


※その他よくある事例
職業:軍人の他、弁護士、経営者、医者、看護師、国連、WHO、NATO等の国際機関の職員等
人物像:アメリカ人、イギリス人、カナダ人、ロシア人等


3、返金請求の可否

上記の事案において、Aさんが50万円をBの指定口座に振り込んだ点については、自称フランス人軍人のBはAさんの恋愛感情を利用していること、不正確な投資情報を申し向けていること、そもそも投資運用の実態があるかも不明であることから詐欺(民法96条1項)に当たり、法律上は取消しによる返金請求が可能です。

また、投資サイトは一応Bとは別ですが、実際にはグルとなってAさんを騙していることも十分に想定することができます。そのように投資サイトがBとグルになっていることを証明できるのであれば、Aさんが投資サイトから100万円分の〇×コインを購入するために100万円支払った点も投資サイトに対して詐欺取消しを主張し、返金請求を行うことが可能です(民法96条2項)。


4、被害回復の困難性
“結局、どこの誰とやりとりしているのかわからない”

もっとも、法律上は上記3のような説明が可能であるとしても、AさんはBとインターネット上でしか面識がなく、住所や本名を知っているわけではありませんし、投資サイトの事業者についても、実在するか否かを含めて、その実体がわかっているわけではありません

国際ロマンス詐欺では、インターネットの匿名性や国際的な取引との関係で、しばしば詐欺を行っている相手方の特定が困難となって、返金請求は絵にかいた餅となり、泣く泣く被害回復を断念せざるを得ないケースが少なくありません。

今回の事案では、Bの指定した口座がわかっているため、預金口座に対する口座凍結(※特定の口座が詐欺被害に利用されている口座であると認められる場合に、金融機関に要請して取引を停止し、その口座から金銭を動かすことをできなくする措置)を行なってその口座から被害回復を図ったり、口座情報からBやその関係者の特定を試みたりすることも考えられますが、それらの手段は必ずしも功を奏するわけではありません。

さらに、今回の事案とは異なり、より複雑な決済手段を用いることで、ほとんどBを特定する手がかりがないケースも想定されるところです。

 
5、被害に遭わないためには

このように国際ロマンス詐欺は、被害回復が容易ではないケースもみられることから、詐欺手段をよく知り、各々の注意によって被害を回避することが肝要です

実際に会ったこともない人物が理由を付けて金銭を要求してくること自体が異常であり、(国際ロマンス詐欺に限りませんが)投資話において「確実に利益が出る」などという説明を信じてはいけません

なお、暗号資産交換業者は、金融庁・財務局への登録が必要です。海外に拠点を置く暗号資産交換業者であっても、日本国内で暗号資産交換業を行う場合や暗号資産交換業に係る取引の勧誘を行う場合には登録が必要です。国際ロマンス詐欺における投資サイトの事業者はそもそも架空業者であることも多いため、まずは登録の有無を確認してみましょう(もちろん、登録があるから詐欺ではないというわけではありません)。

国際ロマンス詐欺は盲目的な恋愛感情を利用しているため、騙されている被害者本人は、それが詐欺であるとの冷静な判断ができない可能性もあります。自分だけではなく、周りのご家族やご友人が騙されているのではないかとの疑いがある場合には、速やかに消費生活センター、警察、弁護士などへの相談を促してみてください。