破産手続開始の決定と破産手続廃止の決定

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1.破産とは
 破産とは、支払不能または債務超過にある債務者の財産等の適正かつ公平な清算と、債務者の経済生活の再生の機会を図るための法的手続きをいいます(破産法第1条参照)。
 簡単にいえば、債務者の財産等の清算に関する手続のことをいいます。


2.破産手続開始の要件
 破産は、「支払不能」もしくは「債務超過」になった場合に申立てができます(破産法第15条1項、同第16条1項)。
 「支払不能」とは、現在、弁済すべき借金があるにもかかわらず、弁済ができない状態をいいます。「債務超過」とは、負債が資産を上回る状態をいいます。なお、債務超過の場合に、破産手続が開始できるのは、法人のみとなっています。


3.通常(管財)事件の破産手続の流れ
 通常の破産手続は、破産手続開始の申立てを行った後、裁判所の破産手続開始決定があると同時に破産管財人が選任され、債務者の財産等につき、破産管財人が管理・処分をすることになります。
 破産者に財産があれば、破産管財人はそれを金銭に換価し、各債権者に配当という形で、平等に分配します。


4.破産手続廃止の決定
(1)同時廃止事件
 破産者の財産のすべてをお金に換えても、破産手続の費用をまかなうのにも不足する場合があります。そのときは、換価や分配を行わず、破産手続開始決定があると同時に手続きを終えることになります。
 法文上は、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産開始の決定と同時に、破産廃止の決定をしなければならない」と規定され、かかる破産事件を同時廃止事件と呼びます(破産法第216条第1項)。このような場合、財産上の無益な手続を行わないため、債務者に破産手続開始に伴う効果を生じさせると同時に、破産管財人を選任せず破産手続を将来に向かって終了させることとしたものです。
 名古屋地方裁判所において同時廃止事件の処理がなされる場合の目安としては、
①現金及び普通預貯金の合計額が50万円未満にとどまっているとき、
②現金及び普通預貯金以外の財産につき、財産項目ごとの合計額がいずれも20万円未満にとどまっているとき、
が挙げられ、①②のいずれの基準も満たすときであれば、同時廃止になる可能性が高くなります。
 もっとも、破産管財人に債務者の逸失財産等の調査と回収を委ねるのが妥当と判断されるような場合には、債務者に費用を予納させて管財事件として扱われることになります。
(2)異時廃止事件
 「裁判所は、破産手続開始の決定があった後、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければならない。」(破産法第217条第1項)。これを異時廃止事件と呼びます。
異時廃止が行われる典型例としては、
①破産決定の際に債務者の財産内容と財団債権(公租公課・労働債権等)が明白でない場合、
②否認対象行為が疑われた申立人に費用を予納させて破産手続を開始したが、結局はさしたる破産財団を組成できなかった場合、
③取戻権の行使や否認によっても、あるべきはずの財産を回復できなかった場合、
④破産手続開始後に多額な財団債権となる公租公課や労働債権があるため、一般債権に対する配当の見込みがない場合、
などです。
 異時廃止の決定は、破産管財人の申立てにより、又は職権でなされますが、裁判所は破産債権者の意向を確認するなどして、破産財団が組成できないか否かを判断することとされています。