反社会的勢力への対応について

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Q1、そもそも反社会的勢力(反社)とは何ですか。
A1、
 平成19年に政府が発表した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」によると、反社会的勢力とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。


Q2、なぜ反社会的勢力の排除が必要なのでしょうか。
A2、
 反社会的勢力と接点を持つことで、以下のような害悪があるとされています。
①反社会的勢力を介した間接的な法益侵害(反社会的勢力の助長のおそれ)
 …反社会的勢力への利益供与はそれが有償であれ無償であれ、更なる違法行為の助長につながります。
②反社会的勢力と紛争との親和性(トラブルに巻き込まれるおそれ)
 …反社会勢力同士の抗争によって被害を受けたり(例えば、反社会勢力に貸していたビルの1室が壊されるなど)、意図せずに犯罪行為に加担させられているようなケースが考えられます。
③反社会的勢力と取引を行ったことによる信用低下のおそれ
 …コンプライアンスが重視される社会的要請から、反社会的勢力との関係性について噂が流れることで信用低下が生じるおそれがあり、他の取引関係等に悪影響を及ぼすおそれもあります。

 
Q3、反社会的勢力を排除するための法的規制にはどのようなものがありますか。
A3、
 主な法的規制として以下のようなものがあります。

①刑法
 …詐欺(246条)、恐喝(249条)、監禁(220条)、私文書偽造(159条)、業務妨害(234条)、強要(223条)、脅迫(222条)、暴行(208条)に当たる行為及びそれらの行為の教唆(そそのかし)や幇助(手助け)は懲役刑や罰金刑の対象となります。

②組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)
 …組織犯罪処罰法は暴力団を念頭に置いた組織的な犯罪について特に厳しく処罰し、犯罪によって得られた収益の没収について定めています。

③犯罪による収益の移転防止に関する法律
 …主にマネー・ロンダリングを規制しています。マネー・ロンダリングとは、犯罪行為による収益が没収されることを防ぐために、違法な収益を、金融機関などで架空名義を利用した送金などを繰り返すことによって、金銭の出所や受益者をわからなくさせる行為です。

④暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法、暴対法)
 …主に、指定暴力団員等の暴力的要求行為等を処罰することなどを定めています。「俺は組のものだ」などと背後に暴力団がいることを示して金銭等を要求する行為は、ケースによっては刑法での処罰(脅迫、強要等)は困難ですが、暴対法によって規制することが可能になりました。

⑤暴力団排除条例
 …各自治体が地域の特色に応じて規制を行っていますが、全国的に共通項となる規制としては、暴力団員等に対する利益供与の禁止、不動産の譲渡等をしようとする者への義務付け(不動産を暴力団事務所に利用されないことの確認義務など)及び青少年保護のための規制(学校等周辺への暴力団事務所開設の禁止など)が挙げられます。

 
Q4、反社会的勢力と関わらないためにはどのようにすればいいでしょうか。
A4、
 反社会的勢力の特徴を理解し、取引の相手について慎重な観察を欠かさないことが肝要です。役員等の態度、事務所の様子、登記情報(法人登記、不動産登記)、決算書、納税証明書等の状況、会社の姿勢(特に遵法精神)などを確認して、怪しい相手方とは手を切ることを検討すべきでしょう。

 また、日常の取引で用いる契約書において、取引相手に対して、反社会的勢力ではないことを表明・確約させ、これに反した場合には催告や損害賠償なくして契約を解除できる旨の条項(暴力団排除条項、反社会的勢力排除条項)を設けておくことも有効な手段といえます。

 
Q5、取引相手が反社会的勢力であることがわかった場合はどうすればよいでしょうか。
A5、
 A2に記載したような反社会的勢力と関わりあうリスクを踏まえると、早期に取引関係を解消する必要があります。相手方に直接対応する場合には、安全な場所・時間に、安全な人数で対応し、用件を手短に伝え、対応については記録化(録音、メモなど)しておくことが望ましいです。そのような対応が困難な場合には、暴力追放運動推進センター(各都道府県に設置されている公益財団法人)、警察、弁護士等に助けを求め、連携をとって反社会的勢力の排除を実現しましょう。