民法改正(6)~売買について~

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民法改正(6)~売買について~

 

売買の目的物に問題が生じている場合、従来は「瑕疵担保責任」として売主の責任を規定していましたが、今回の改正はこれを「契約不適合責任」として整理しました。

 

1.瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

(1)従来の瑕疵担保責任においては、目的物(例えば、中古スマホ等の「特定物」に限られます)に「隠れた瑕疵」があるとき、買主が契約解除や損害賠償請求を行うことができるとされていました。

(2)改正民法の契約不適合責任においては、売買の目的物に関する制限がなくなり、お店で何台も販売している新品のスマホ等、当該目的物の個性に着目しない物品も対象に含まれます

また、「隠れた瑕疵」という分かりにくい要件が改められ、目的物が種類・品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(※1)ものであるときに、売主の責任追及が認められるようになりました。「隠れた」瑕疵という要件が不要になった点が大きな改正点です。

 

  ※1「契約内容が不適合」か否かは、契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情に基づき、取引通念を考慮して判断されます。当事者の意思が確定できない場合に、目的物の客観的な性状(通常有すべき品質など)が契約内容不適合の有無の重要な要素となり得ます。

     

2.買主の救済方法の拡充

(1)買主の追完請求代金減額請求

  買主の救済方法については、契約解除や損害賠償に加えて、追完請求権(562条 ※2)や代金減額請求権(563条 ※3)が追加され、整理されました(※4、※5)。

 

  ※2 追完とは不適合を改めることであり、補修、代替物の引渡し、不足分の引渡しが想定されています。

 ※3 対価的均衡確保のための救済手段であり、契約の一部解除の側面を持ちます。ただし、減額請求の前に原則として追完の催告が必要であることに注意が必要です。

 ※4 なお、契約解除、追完請求、代金減額請求については、売主に帰責事由がない場合でも選択することが可能です。すなわち、売主は自分に落ち度がなかったという抗弁を出すことができません。

 ※5 他の救済手段との関係

    代金減額請求権を行使しつつ、契約を一部解除ないし全部解除することはできません。また、損害賠償請求についても、代金減額と同義の損害賠償請求は認められません。

(2)期間の制限

   従前は、買主が目的物の瑕疵の存在を知ってから1年以内に権利行使をする必要があるとされていました。すなわち、瑕疵担保責任を追及する場合には、「売主に対して、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の根拠を示す」必要があり、かつ、1年の除斥期間があったため、買主の負担が大きいと言われていました。

今回の改正により、買主は種類又は品質に関する不適合を知ってから1年以内に「その旨の通知」を行えば足りることになりました(566条)。

   なお、数量不足等その他の不適合については除外されており、その場合は一般的な消滅時効のルールに従うのが適切とされました。

 

3.経過措置

    改正民法は、売買契約の締結日が施行日(令和2年4月1日)以降の契約に適用されます。