相続法改正(5)~相続の効力等に関する見直し~

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1、権利の承継~その1
…一般的な規律(改正民法第899条の2第1項)
 改正民法第899条の2第1項により、相続に際して、法定相続分(民法の定める相続割合)を超える部分の権利の取得を第三者に対抗(法的に主張)するには、登記・登録・引き渡し等の対抗要件を備えることが必要とされています。

例えば、亡父Xは「Aに甲土地を相続させる」旨の遺言を残したにもかかわらず、他方で、Xの死亡後に次男Bが甲土地の持分1/2を第三者Cに譲渡した場合を考えてみましょう。
 この場合、AとBの法定相続分はそれぞれ1/2ずつですが(民法第900条4号)、Xは、「甲土地をAに相続させる」旨の遺言を残しているので、Aは甲土地に関して、法定相続分を1/2超えて取得することになります。他方、Aが法定相続分を超過して取得する甲土地の1/2の持分については、第三者Cが、法定相続分どおりであればそれを取得するはずだったBから譲渡を受けて取得しており、同持分の取得について、AとCが競合する関係が生じています。
 改正民法第899条の2第1項によれば、AとCのうち、先に同持分について登記を備えた方が相手方に優先してその権利を取得することになります。

2、権利の承継~その2
…債権についての特則(改正民法第899条の2第2項)
 債権の取得については、債務者に対する通知(又は債務者の承諾)が対抗要件となるところ(民法第467条)、一般の債権譲渡の場面と異なり、譲渡人(他の共同相続人全員)が債務者に通知することは期待できません。
 そこで、改正民法第899条の2第2項は、債権を承継した者(譲り受けた相続人)が当該債権に係る遺言または遺産分割の内容を明らかにして債務者に通知したときは、共同相続人全員が通知したものとみなすこととしました。
  
 例えば、亡父Xが債務者Dに対して500万円の貸金債権を有していたところ、Xは、「Aに、Dに対する貸金債権を相続させる」旨の遺言を残したにもかかわらず、他方でBは同債権のうち250万円の部分について、第三者Cに譲渡した、という事案を考えてみます。
 長男Aは1/2を超える債権取得(250万円分)については第三者Cと対抗関係に立つため、Cに優先して同部分を取得するには、債権譲渡の対抗要件(譲渡人から債務者に対する通知又は債務者の承諾(民法第467条第1項))をCより先に備える必要があります(上記1「権利承継~その1」参照)。
 このとき、改正民法第899条の2第2項によれば、Aは、例えば遺言書を示して自身がXから貸金債権の全部を承継したことを明らかにしてDに対して通知を行えば、Bの協力を必要とせずに債務者対抗要件を備えることができます。なお、この対抗要件をもって債務者以外の第三者にも対抗するには「確定日付ある証書」で通知を行う必要がある点に注意が必要です(民法第467条第2項)

3、義務の承継
…相続分の指定がある場合の債権者の権利行使(改正民法第902条の2)
 亡くなった方に対し債権を有している人は、遺言や遺産分割において法定相続分と異なる相続分の指定がなされたときでも①法定相続分に基づく権利行使と、②指定相続分に応じた権利行使を選択できます。ただし、いったん②を選択した場合(指定相続分を承認した場合)には、①を選択することはできないとされました。

例えば、亡父Xは、債権者Eに1000万円の借金を負っていたところ、Xは「Eに対する1000万円の金銭債務につき、その相続分割合を長男A:次男B=2:8と指定する」旨の遺言を残していた場合を考えてみましょう。
 このとき、債権者Eは、①それぞれAから500万円、Bから500万円を回収する方法(法定相続分割合)と、②Aから200万円、Bから800万円を回収する方法(指定相続分割合)を選択することができます。しかし、いったんEが、Xの遺言による指定相続分を承認し、②を選択すると、もはや①を選択することはできず、Bが800万円を支払ってくれない場合でも、Aから200万円を超えて債権回収を行うことはできません。
 したがって、Eのような被相続人の債権者としては、相続人の資力等を考慮し、①と②のいずれが有利となるか慎重に考える必要があります。

4、施行日
 今回の法改正は内容に応じて時期をずらして段階的に実施される点に注意が必要です。相続の効力等の関する見直しについては令和元年7月1日から改正法が施行されます。