相続法改正(4)~遺留分制度の見直しについて~

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Q1 遺留分とはなんですか?
A1 兄弟姉妹以外の相続人について認められる、最低限の取り分を確保する制度です。
 相続人の属性に応じて相続財産に占める遺留分の割合は決まっており、遺留分権利者が直系卑属(子など)又は配偶者のみの場合は2分の1、直系尊属(父母など)のみの場合は3分の1となります。
 そして、各相続人の個別的遺留分の割合は、上記の遺留分の割合を各自の法定相続分で分けたものになります。
 例えば相続人が配偶者と子2人の場合、相続財産に占める遺留分の割合は2分の1となり、それぞれの遺留分は、配偶者が4分の1、子が8分の1ずつとなります。

Q2 遺留分を計算するための財産の価格はどのように決まるのですか?
A2 遺留分を計算するための財産の価格は、被相続人が相続時に有していた財産だけでなく、一定の条件を満たした過去の贈与についても財産として加算されます。
 相続人以外の者に対する贈与については、原則として相続開始前の1年間にしたものは、遺留分を計算するための財産として算入されます(現行民法第1030条、改正民法第1044条第1項)。
 相続人に対する贈与については、改正前は、期間に関係なくすべて加算されていました。しかし、相続開始時の財産がマイナスであったとしても、何十年も前の贈与の価格が加算されることによって、遺産がプラスの状態が作出できることから、第三者である受遺者(遺言によって財産を取得した者)・受贈者(贈与によって財産を取得した者)に不測の損害を与え、法的安定性を害する恐れがあると指摘されていました。
 そこで、今回の改正によって、相続人に対する贈与については、原則として相続開始前の10年間にされたものに限って算入されることになりました(改正民法第1044条第3項)。 

Q3 遺留分を侵害された場合はどうしたらよいのですか?
A3 改正前は、遺留分減殺請求によって、遺贈または贈与は遺留分を侵害する限度において効力を失い、その権利は遺留分権利者に帰属するとされていました。しかし、遺留分減殺請求の結果、遺贈又は贈与された不動産や株式が、受遺者・受贈者と遺留分権利者との共有となることが多いのですが、共有関係の解消を巡って新たな紛争を生じさせることになるとの指摘がされていました。
 そこで、今回の改正によって、遺留分権利者は、受遺者・受贈者に対し、遺留分侵害額の請求権を行使することによって、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができることになりました(遺留分請求権の金銭債権化、改正民法第1046条第1項)。
 なお、相続分の指定を受けた相続人に対しても、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することになります。
 例えば、相続人が被相続人の子A、B、Cの3人で、被相続人が相続分をAは0(ゼロ)で、BとCがそれぞれ2分の1ずつと指定しており、遺留分を算定するための財産の価格が3000万円であったとします。
 この場合、Aの遺留分侵害額は500万円(3000万円×1/2×1/3)となり、遺留分侵害額の請求権を行使することで、BとCにそれぞれ250万円ずつの金銭支払を請求することができます。

Q4 取得した遺産が不動産や株式で、すぐには金銭を支払うことができない場合はどうなるのですか。
A4 裁判所は、受遺者・受贈者の請求によって、その負担する金銭債務の支払いについて相当の期限を与えること(期限の許与)が可能とされています(改正民法第1047条第5項)。
 裁判所が期限の許与を付した判決をする場合には、期限付きの判決をすると考えられます。