Q1、最近、ニュース等で残業代の請求が話題になることが多いですが、一般に、残業代は、何を根拠に請求するのでしょうか。 A1、 就業規則があればその規則によります。就業規則が定められていない場合にも、労働基準法を根拠に請求できます。 Q2、労働基準法では、時間外労働、深夜労働、休日労働の賃金については、どのようなルールとなっていますか。 A2、 時間外労働について、労働基準法は、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと定めています(32条)。この時間を超えての労働に対しては、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。 深夜労働は、午後10時から午前5時までの労働で、それが所定労働時間内であっても25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働として深夜労働をした場合には重複となり、50%以上の割増賃金となります。 また、労働基準法は、原則として週1回以上の休日を与えなければならないとしています(35条)。そして、休日労働に対しては35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。休日に時間外労働を行っても割り増しは発生しませんが、深夜労働を行った場合は60%(35%+25%)以上の割増となります。 Q3、よく実労働時間が何時間であったかが問題となりますが、これはどのように判定されるのですか。 A3、 “労働時間”は、「労働者が使用者に労務を提供し、使用者の指揮命令に服している時間」と定義されます。抽象的に言うと、労働者が使用者から時間、場所、業務の内容について具体的な指示のもとに拘束を受け、その指揮命令下に置かれていると評価されるか否かとなります。もっとも、「休憩時間」「自由時間(労働時間の前後において就労が免除されている時間)」は労働時間から除外されています。 Q4、具体的に、朝礼、準備体操は労働時間に含まれますか。 A4、 業務そのものの実作業ではなくとも、業務の遂行上、使用者が必要だとして参加を命ずる朝礼、準備体操、教育、訓練は労働時間になります。 Q5、例えば、いわゆる「引っ越し便」ですと、午後5時までが所定労働として、荷物を詰め込む待機時間があり午後6時に出発するとして、この1時間は労働時間でしょうか。 A5、 待機時間が出発までの作業体制の中に組み込まれていると評価されるような状態か否かがカギとなります。例えば、午後6時出発として、その出発時刻は、運転手にいつ、どこで、どのように伝えられたのか、運転手は出発時間を伝えられた後、何をして過ごしていたか等を検討することになります。 Q6、引っ越し便がフェリーを使用した場合、乗船している時間は労働時間と評価されますか。 A6、 フェリー乗船中、運転手が、車両から離れて客室等で何をしてもよいという状態であれば、基本的に休憩時間と評価されます。 Q7、会社が割増賃金に代えて一定額の手当てを支払っている場合は、割増賃金は支払わなくても良いのですか。 A7、 労働基準法が定めているのは、あくまで労働基準法の定める計算方法による割増賃金を支払うことであって、その金額以上を支払ってさえいれば、計算方法が労働基準法と異なっても構わないし、固定額で支払っても構わない、というのが裁判所の考え方です。ただし、手当を支払う場合、その手当のうち、いくらが割増賃金なのかを明確に合意しているか、または就業規則で定めていなければなりません(最高裁平成6年6月13日判決)。 |